京都府庁旧本館のお花見は二度美味しい?
京都府庁の旧本館は、明治時代に竣工した近代建築物で、国の重要文化財に指定されています。また京都市民には桜の名所としても知られており、桜の季節には一週間ほど一般公開され、中庭でお花見を楽しめます。
つまり、名建築物だけでなく桜も併せて、二度美味しいのです。
では(写真で)ご賞味あれ・・・
まずは重要文化財の建物から
京都府庁旧本館は、京都府の技師であった松室重光が設計し、明治37年(1904)に竣工しました。京都の最高意思決定機関に相応しく、ルネサンス様式の重厚な建築物で、国の重要文化財に指定されています。昭和46年まで京都府庁本館として、また現在も執務室や会議室として使用されており、現役の官公庁建物としては日本最古のものだそうです。
松室重光は、東京駅舎・日本銀行本店・奈良ホテルなどを設計した辰野金吾の弟子で、国産近代建築設計者の第2世代の人です。
では写真の正面玄関から入館して中庭に向かいましょう。
続いて中庭の桜を楽しむ
玄関から中庭に入ると、正面に背の高い枝垂桜が目に入ります。この桜、京都を代表する桜の一つ、円山公園の枝垂桜(初代)の孫にあたるのだそうで、撮影時は満開を過ぎていたものの、主役に相応しい貫禄と美しさを感じました。
孫桜に寄ってみた
孫桜を間近で見ると、上品なピンクの花がバランス良く伸びた枝に咲いており、よく手入れされているのが見て取れます。それもそのはず、実はこの桜、全国の桜保存活動に携わる日本一の桜守、佐野藤右衛門さんの植樹だそうです。
さて突然ですが、ここでクイズです。「京都の府の花はなんでしょうか?」
ここで敢えてのクイズということは、皆さんお分かりですね、そうです、正解は”枝垂桜”です。
「流れるようなやわらかさと、薄紅色の花をつけた美しさは京情緒そのもの。一方で、風雪に折れないシンの強さは、まさに京都人気質。」ということで枝垂桜が府の花になりました。ちなみに府の木は、北山杉だそうです。
個性のある様々な桜のカタログのような
では、中庭全体を見てみましょう。限られた空間だけに桜の並木とはいきませんが、ピンクに白、枝垂れとそうでないものと様々な個性の桜がバランスよく配置され、さながら桜のカタログのようです。
また思った以上に、西洋建築と桜の組み合わせも魅力的。お互いの美しさを引き立てているようで、二度どころか三度も四度も美味しいコラボでした。
容保桜はその名にふさわしい佇まい
中庭の南西隅に咲くのは容保桜(かたもりざくら)と呼ばれる、清楚な白い花の桜です。容保といえば松平容保公、江戸時代の最終末期、混乱の時代に京都守護職に任ぜられ、孝明天皇の信頼も厚く、京都の治安維持に尽力された会津藩主。当時はここに京都守護職上屋敷があったことに因んで名付けられたそうです。
ちなみに容保桜の名付け親は、あの佐野籐右衛門さん。さすがは京都の桜守、いい名前を付けられますね。
純白の花はラストサムライに相応しく
幕臣として京都を守り、また会津若松で最後まで戦い抜いた容保公、会津藩士はまさに幕末のラストサムライ。明治維新の動乱に潔く散った彼らにふさわしく、容保桜は純白の花で目を楽しませてくれます。
容保桜の隣に石柱と松のオブジェ
容保桜をご覧になったら、その隣にある、背の低い松と石柱で造られたオブジェらしきものもお見逃しなく。
三本ある石柱は並の石柱とは違い、よく見ると、真ん中の石柱に漢字で「天正拾七年五月吉日」と刻まれています。天正十七年といえば戦国時代真っ盛り、あの豊臣秀吉が1589年に改修した五条大橋の橋脚の一部だそうです。改修で戦国時代にお役御免となった石柱を、京都市民の生活を支えてきた功労者として記念に再利用、つまり400年越しでリサイクルするなんて、さすが京都!!
満開の枝垂桜は妖艶なピンク
容保桜の反対側、中庭の南東隅ではピンクの枝垂桜が満開でした。先程ご紹介した孫桜よりもピンクが濃い、艶やかな桜です。横方向の広がりが大きく傘のような枝振りで、雨が降っても守ってくれそうな程、花がぎっしり咲いています。
日本の美の極致
花の傘に入ると、可憐で儚げな枝垂桜はまるで花の雲のよう。「これぞ日本の美の極致」といいたくなるほど美しく、しばし見惚れました。
白い雲も負けてません
枝垂れのピンクの雲には負けられないとばかりに、白の桜も空を覆いつくす勢いで枝を伸ばします。
紅白桜合戦!
様々な種類の桜が混在しているだけに、花に寄ってみても、白とピンクの双方のグラデーションが入り混じり、京都府庁旧本館ならではの花景色を見せてくれます。さながら紅白桜合戦ですが、どちらか一方を選ぶのは無理かも・・・・。
二階から庭の桜を俯瞰する
さて中庭を一通り歩いたところで、旧本館の二階に上がってみましょう。桜を上から俯瞰するチャンスはなかなかありませんので、ワクワクしつつ階段を登ります。部屋の窓から外を見ると、ちょうと目の高さに松や桜のてっぺんが見えます。庭の銅像も頭の天辺を見下ろせます・・・。こうしてみると、やはり祇園の孫桜が中央の円形舞台に立つように配置されており、庭の主役であることが分かります。
老いも若きも助け合い
満開の枝垂桜に近い窓に移動すると、ピンクいっぱいの空間が広がります。こうしてみると、若い花に少し衰えた花も楽しめて、 桜の満開時期が少しづつ違うのも長所に見えてきます。
色、形、大きさのすべてが美しい桜
枝垂桜の花弁をよく見ると、ピンクの色に濃い薄いがあり、この変化が景色に深みを出しているように思います。また、一つ一つの花ビラがスリムなため重なりあう部分がなく、五弁の形が星のように整っています。サイズも、花ビラがこれ以上、長くても短くても花の美しさが損なわれる絶妙な大きさに見えます。最近は、海外の方の桜人気も上昇中、桜を見るためだけに日本にいらっしゃるとか。世界で認められる美しさには、ちゃんと理由があるんでしょうね。
松室重光と七代目小川治兵衛の最強コラボ
京都府庁旧本館の中庭は、写真のとおり四方を二階建ての庁舎に囲まれた西洋風の構造ですが、設計は、あの日本庭園の名人、七代目小川治兵衛だそうです。西洋の建築法を取り入れながらも、松室重光と小川治兵衛がそれぞれ建物と庭に日本らしさを具現化し、最高の和洋折衷が出来上がったんでしょうね。
こちらは白の空間
二階の反対側に行き、容保桜側からも庭を俯瞰しました。こちから見ると白の桜が多くの空間を占め、先程のピンクの空間とは様変わりします。一つの庭でこれだけ劇的に眺めが変わるとは、さすが小川治兵衛、名人の面目躍如といったところでしょうか。
額縁の桜写真
一階、二階の双方で旧本館の建物、庭、桜を堪能したところで中庭を出ます。通路越しに見えるさながら額縁の桜写真のような風景に後ろ髪引かれつつお花見、終了です。
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