雨の善峯寺で、紫陽花を愛でる
善峯寺は平安時代の中期、1029年に源算上人によって開山、伽藍が寄進整備され、鎌倉・室町時代には天皇家との繋がりも深く52の僧坊を誇りました。しかし、応仁の乱によってほとんどの坊が焼失し、江戸時代 徳川五代将軍綱吉の母、桂昌院によってようやく復興されました。今日の善峯寺はこの復興時に形造られたもので、当時の鐘楼、観音堂、薬師堂などは貴重な文化財として現存します。現在は、西国三十三ヶ所霊場の二十番札所として、また桜・つつじ・牡丹・芍薬・サツキ・紫陽花・秋明菊・紅葉といった季節の花の名所、京都市内を一望する眺望の名所として知られます。今回は、梅雨に濡れてしっとりと咲く紫陽花の境内をご紹介します。
雨中、山門から観音堂(本堂)に向かう
善峯寺は山寺、斜面に複数の「お堂エリア」が点在し、これを参道が繋ぎます。私が勝手に呼んでいるだけですが、下から上に、本堂エリア、多宝塔エリア、阿弥陀堂エリア、釈迦堂エリアと続き、薬師堂エリアが一番上にあります。また、これらのお堂エリアに加えて、一つの谷が丸ごと紫陽花と桜で覆われる「白山 桜あじさい苑」があります。 このレポートでは紫陽花をご紹介しますので、この「白山 桜あじさい苑」が主役です。
まずは強い雨が降る中、傘の花を咲かせながら境内に入り、観音堂(本堂)に向かいます。
西国三十三ヶ所霊場の二十番札所
巡礼と言えば四国八十八ヶ所遍路、四国遍路といえばお大師様。西国三十三ヶ所もお大師様の事跡を辿る巡礼と思っていたのですが、まったくの勘違い。「西国三十三ヶ所巡礼」は近畿・東海の観音様の霊場を巡拝するもので、四国遍路などに先駆ける日本最古の巡礼道なんだそうです。 善峯寺は、この最古の巡礼道の二十番札所ですが、今回の主役は紫陽花。まずは本堂エリアの次の多宝塔エリアで見つけた、薄紫のガクアジサイ(額紫陽花)をご覧ください。雨が降る中撮影しましたので、水も滴るアジサイになっているかと・・・。
多宝塔脇の石塔も紫陽花に囲まれて
多宝塔エリアの奥には石塔があり、これを取り囲む形で紫陽花が群生しています。雨で少々くすんで見えますが、緑のグラデーションを背景に日本らしい風景ではないでしょうか。
「あじさい苑」に向かう
多宝塔エリアから、護摩堂を経由して今日の主役「あじさい苑」に向かいます。護摩堂でも赤と青のアジサイが連なって咲いており、紫陽花の壁のよう。
雨のせいか、少し青味掛かって
雨のせいか、晴れの日とは紫陽花の色も違って見えます。赤紫が少し青味掛かって緊迫気味?
開花状況を見渡す
いよいよ「あじさい苑」に入ります。境内に谷があり、これを構成する斜面を一万株のアジサイが覆います。苑に入るとすぐ幸福地蔵のお堂があり、ここから広くアジサイの開花状況を見渡すのがお薦めです。撮影は6月の中旬、満開には少し早かったようです。
しかし梅雨とはいえ、風景が白んでしまう程の雨が降るとは想定外でした。
紫陽花 その1
今日の主人公、「あじさい苑」で撮影した紫陽花を7枚続けて御覧ください。
紫陽花 その2
紫陽花 その3
紫陽花 その4
紫陽花 その5
紫陽花 その6
紫陽花 その7
石灯籠に青と赤の紫陽花
「あじさい苑」の一面の紫陽花に、白山社の鳥居、写真の石灯籠などがアクセントを加えてくれます。そう言えばアジサイの色は、酸性だと青、アルカリ性だと赤のように、土壌の酸性度で変わるんだそうです。写真の斜面では、上半分が青、下半分が赤ですから、庭師さんが上は酸性、下はアルカリ性と土壌を調整されたんでしょうか。些か自信がありません・・・・。
幸福地蔵のお堂を振り返る
「あじさい苑」から釈迦堂エリアに向かう途中、来た道を振り返ると谷越しに幸福地蔵のお堂が見えます。長い柱で支えられて斜面に立つ姿は、スケールは違うものの清水の舞台を思い出させます。雨の向こうのお堂も、なかなか味わい深いですね。
あじさい苑から釈迦堂に
「あじさい苑」から釈迦堂エリアに上り一息つきます。まだ激しい雨が降っていますが、釈迦堂の屋根の下で雨宿りして一息つきます。あじさい苑ほどではありませんが、釈迦堂周辺にも様々な紫陽花が少しづつ植えられており、中でも写真の額紫陽花が気に入りました。
古い話で恐縮ですが、私が子供の頃はアジサイといえば花が球形に咲くホンアジサイでした。これを品種改良してガクアジサイができた・・・と思っていましたが、実際はまったく逆。ガクアジサイは昔から日本にある原種で、これを改良した新種がホンアジサイだそうです(お恥ずかしい次第)。
釈迦堂から薬師堂に
釈迦堂の奥には狛犬と紫陽花が並んでおり、これを横目に見ながら石坂を登り、最上部の薬師堂を目指します。
青紅葉のグラデーション
上り坂の途中、至る所で青紅葉が目を楽しませてくれます。善峯寺は紅葉の名所だけに各種の楓があり、梅雨時には見事な青楓となります。
釈迦堂の手水舎
同じく、釈迦堂エリアを見下ろすと、右手に屋根付きの手水舎が。改めて山寺であることを実感する風景ですね。
甍の波が雨と霧の間に間に
またまた同じく見下ろすと、釈迦堂エリアと多宝塔エリアの甍が重なり合い、雨と霧とあいまって梅雨時ならではの風景を見せてくれます。
紫陽花 その8
再度、主役の紫陽花を4枚続けて御覧ください。
紫陽花 その9
紫陽花 その10
紫陽花 その11
石灯籠に紫陽花、再び
最上部の薬師堂からは京都市内が一望でき、晴れると京都タワーも見えますが、今回は生憎の雨。眺望は諦めて、薬師堂裏の庭園を楽しみます。池の向こう側に安定感のある石灯籠があり、紫陽花が華を添えます。
池を見渡す
大きな庭園ではありませんが、細長い池に、岩や植木がうまく配置されており、見る角度によって異なる景色を見せてくれます。紫陽花の季節ともなれば、多くの観光客が来られるのでしょうが、激しい雨のせいか無人の庭を独り占めできました。かなり負け惜しみ入ってますが・・・。
本堂に戻る
薬師堂エリアから境内を下り、再び本堂エリアに戻りましたが、まだ強い雨が降っています。銅像のお大師様もさすがに閉口されているように見えましたが、その分、紫陽花は活き活きとしており、今回のツアーに相応しいお天気だったかと思います。
善峯寺の紫陽花ツアー終了
悪天候の中、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。善峯寺の紫陽花を堪能していただけましたでしょうか。拙い文章と写真ですが、皆さんが京都観光される際の参考となれば幸いです。(完)
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